会員の活躍

創設以来、これまでに約9万人の卒業生を社会に送り出しました。
各分野の第一線で活躍する女性たち、大学での学び、出会いを生かし、多彩な分野で活躍している卒業生をご紹介します。

 

がんばってます!卒業生 Vol.1

文学部卒業生、リゾートビジネスで奮闘中!倉田穂乃香さん

 本年3月に文学部歴史文化コースを卒業した倉田穂乃香さんは、高級会員制リゾートホテルを運営している大手リゾート開発企業リゾートトラスト株式会社(東証1部上場)の会員制本部第3事業部にて、首都圏のお客様のリゾート・ライフを支援しています。倉田さんは文学部在学中オープンキャンパススタッフとして活躍したほか、文学部として初めて参加したビジネス提案コンテストでも企業賞を受賞し、学長賞も授与された学生です。文学部ではビジネス志望の学生も受け入れ、多くの人材を大手企業に輩出したいと考えています。倉田さんの益々の活躍を期待しています。
 

特別座談会 Vol.4

「和」の精神を社会に広げるために

 

「和」とは、なごみであり、親しみであり、穏やかさであり、助け合うことであり、他人を思いやること。聖徳大学には、学生時代に身につけた専門性を活かしながら、社会にそうした「和」の精神を広げる活躍をしている卒業生がたくさんいます。今回は「食」や「スポーツ」を通して、健康で豊かな社会の実現を目指す3名の卒業生に、聖徳大学で育まれた専門性と人間力について、そして、それを社会にどう還元しているのかを、人間栄養学部の恩師である先生方と共に語り合っていただきました。

聖徳大学との出会い

司会:長江 高橋さんは2000年のシドニーオリンピックに女子10000mの代表として出場なさり、選手生活を終えた後にアスリート・セカンドキャリア支援制度の第一期生として聖徳大学に入学なさいました。
高橋 選手時代は貧血や厳しい体重管理に悩まされました。栄養が云々というよりは、もうエネルギーばかり気にしていましたね。食事に揚げ物が出た時は衣をはがして食べるとか。一日に何十キロも走るので、走るのに必要な栄養素もその分しっかり取らなくてはいけないのですが、寮に管理栄養士がいるわけでもないので、栄養指導もない。自分で本を読んで知識を得ていました。アスリートは練習後の食事をすごく楽しみにしているので、厳しい食事管理をすることは選手にとってもすごくストレスで、ストレス太りになる選手も実際見てきました。リラックスしながら食事を楽しんでもらえる環境を作ることがすごく大事だと思います。他の選手も同じようにつらい思いをしているのを見てきたので、食を通じて選手たちの可能性を広げるお手伝いができればと思い、管理栄養士を目指そうと思いました。その頃JOC(日本オリンピック委員会)のホームページに、アスリートのセカンドキャリアをサポートするという記事が載っているのを見て問い合わせたところ、聖徳大学を紹介していただきました。
長江 菅生さんと土田さんも高校生まで陸上競技部で活躍なさっていた。そんな皆さんがなぜ、聖徳大学で栄養学を学ぼうと思ったのか。まずは入学のきっかけを教えてください。
菅生 私も中学生ぐらいから貧血に悩まされていました。病院で鉄剤をもらって飲んでいましたが、やっぱり自分の食事を変えないといけないと考えるようになり、栄養関連の本を読むようになりました。私、計算が好きで、もともと食品の後ろについている栄養成分表示を見るのも好きだったので、進路を考える時、管理栄養士って自分に向いているんじゃないかなと思いました。とはいえ、初めは進路の選択肢の中に聖徳大学はなかったのですね。それが3年生の7月ぐらいに、大学の陸上競技部の方がわざわざ高校まで来てくださったんです。それが聖徳大学の監督でした。当時、聖徳大学の陸上競技部は創部3年目だったのですが、監督が「授業スタイルに合わせて練習メニューを組むから学業と両立ができる」と言ってくださいました。何校かオープンキャンパスにも参加していたのですが、陸上部がある大学に入学したとしても管理栄養士専攻はお断り、学部を変えてくれと言われていたのです。そこで、監督からいただいた言葉に魅力を感じて聖徳大学のオープンキャンパスに参加して、授業と実験の両方を体験させていただいたら、すごく面白くて、「ここだっ!」と決めました。陸上の夢も管理栄養士の夢も追うなら、聖徳大学しかないな、と。
土田 私も高校時代には、陸上に力を入れていました。その中で、一緒に走っている部活の友人が、実力が私よりあるはずなのに疲労骨折や貧血に悩まされていて、走れないことが多かったのです。彼女は寮生活でしたが、寮に管理栄養士がいるわけではなく、学食と同じ。そんな環境の中、彼女は自分で考えて、量を減らしたり、たとえば買ってきたキャベツの千切りを足したりとかいろいろ努力をしていたのですが、彼女にもし、栄養についてのしっかりとした知識があって、管理栄養士のサポートがあれば、もっと活躍できたんじゃないかと思ったのです。自分の競技も大事でしたが、そういう子たちがまだいっぱいいるんだろうな、その子たちの助けになれればいいな、というのが管理栄養士を目指す一つのきっかけでした。でもその頃は、食べるのがすごく好きなのに厳しい食事制限の中でやっていくことに疲れてしまっていて、進路について考えたくないくらいまで追い詰められていたのです。その時、生徒指導の先生が、聖徳大学なら栄養の勉強もできるし、やりたくなったら陸上もできるよと教えてくださり、道が開けました。
 

仲間に助けられた学生生活

 
土田 最終的に、入学時には陸上は続けないという決断をしました。でも、その後1年間、学業だけをやっている中で、陸上競技部の大会結果が耳に入ってくるうちにもう1回走りたい気持ちが湧いてきて、1年の終わりぐらいに入部しました。卒業までに自分が思い描いたような結果は出せなかったのですが、やっぱり走るのが好きだと思えたのはとてもよかったです。
佐々木 陸上競技部には人間栄養学部の学生が多いですが、両立は大変ですよね。必修科目が多くて、出席も厳しい。皆さんはどのように両立をされていましたか?
土田 クラスメイトに助けられました。朝練の後とかすぐに授業に向かわなくてはいけなくて、そうすると「席を取っておいたよ」って隣に座らせてくれる子がいたり。クラス制っていいですよね。担任の先生の導きにも感謝しています。だから、厳しい道を歩んでいたかもしれないけれど、そんなに苦ではなかったし、管理栄養士の資格取得もできました。
菅生 私もクラス制にはすごく救われました。実験で授業後にちょっと残って続きをやらなければいけないような時にも、「行ってきていいよ、もうすぐ大会でしょう」と言ってくれて。もう一人同じクラスに陸上競技部の子がいたので、走りながら問題を出し合ったりもしました。
高橋 私も一回りも年が下の同級生たちにすごく助けられました。大学に入る前は、年下の仲間たちと親しくなれるのかなってちょっと不安があったのですが、逆に向こうからいろいろと話しかけてきてくれて、すぐ友だちになりました。わからないことを教えてもらうなど、フォローしていただくことが多くて、彼女たちのほうが私よりも本当にしっかりしていたなと思います。1年生の時は基礎科目が中心だったので周りの人たちにフォローしてもらいながら何とか順調に進むことができましたが、2年生になると専門分野に入るじゃないですか。そこでガクッと成績が落ちてしまって、たくさん再試を受けました、目標を見失いかけて、もう本当にダメなのかなと思った時もあります。ただ、やめることはいつでもできますし、ここでやめてしまったら、たぶん何をやっても同じことを繰り返すだろうなと思って。一番の目標である管理栄養士の資格を取って、「私にもできる」ということを証明したいっていう気持ちも強かったですね。負けず嫌いを発揮しました。4年間学んで資格も取った今では、年齢に関わらず、やろうという強い意欲があれば何事もできるんだなって思います。
菅生 学生生活で印象に残っているのは、礼法とシリーズコンサート。シリーズコンサートは好きで結構、鑑賞しました。今、仕事で自分より歳上の方とお話しする時、走ることと食事の話しかしないと、なかなか信頼関係が深められないですよね。そういうところで、「ヴァイオリンの生演奏を聞いたことあります」とかって話せるのはいいですよね。
 

健康で幸せな社会のために

 
長江 お仕事の話が出ましたが、菅生さんはランニングコーチを?
菅生 聖徳大学卒業後は2年半ほど実業団で競技を続け、その後はランニングコーチの会社に勤めて、2020年からフリーでランニングコーチをメインに活動しています。管理栄養士としてのみの仕事はずっとやってはいないのですが、指導を受けに来ていただいている方に食事のアドバイスをしたり、パーソナルコーチという形でその方の栄養指導や、例えば減量とかパフォーマンスアップとかなどの目標に向けたご要望に対して指導しています。ランニングクラブで中学生を見ていたりもするので、そこでも食事指導をしたり、ランニングステーションに併設されているカフェのメニューを考えたりする活動もやっています。
土田 私は、卒業後は競技から離れ、株式会社ロック・フィールドというお惣菜を製造・販売する会社に就職しました。今はそこのブランドの一つで健康志向のジュースやスープを提供する「ベジテリア」で店長をしています。入学時にはスポーツ栄養を学んで、運動が強い学校の寮母さんになるなどして、選手のお手伝いができたらいいなという思いを持っていたのですが、授業や実習を通してスポーツだけではなく、いろいろな分野で栄養管理の必要があることを学ばせていただいて視野が広がりました。学生時代に今の会社のお惣菜のブランドのお店でアルバイトをしたのですが、そこがすごく楽しくて。お客様が「美味しかった」と笑顔でお帰りになるのが嬉しかった。こういう食事の提供の仕方もあるんだって思い、就職を決めました。お客様から「健康にいいジュースはどれ?」とか「美肌にいいジュースは?」という質問を受けるので、大学で学んだことが活かされているかなとは思っております。
 食事は絶対にすべてを自分で作りなさいではなく、買ったものをどういうふうに取り入れるか、組み合わせるか。おそらくそこもアドバイスされていらっしゃると思うので、栄養学は役立っていますよね。
菅生 栄養の知識はもちろん、大学時代の様々な経験が今に役立っていると感じています。お仕事をフルタイムでやっていく中で、趣味で練習したりとか、週末の大会に出たりっていう方の指導をする機会が多いので、朝練してから朝一で授業に出たりとか、実習がある時にどう走る時間を作ったかとか、学生時代の経験を基に時間のやりくりなどもアドバイスできるので。それと、自分が食事制限で苦しい思いをした経験があるので、食事やお酒に関しても「ダメ」とは言わないようにしています。量や、運動後の吸収率が高い時にはアルコールを飲む前に水分を摂取するとか、調整の仕方をメインに伝えるようにしています。
高橋 大学卒業後は全国各地のマラソン大会でゲストランナーをやらせていただいたり、ランニングクリニックをやらせていただいたり、時々ですが、講演会などの仕事をしています。コロナ禍に入ってからは、ちょっと食の活動から離れていたのですが、再び子どもたちと保護者に向けて食に関してのトークショーをやらせていただいたりという活動が戻ってきています。それと、昨年9月から聖徳大学の客員教授のお仕事もさせていただいていて、目標に向けて頑張る大切さを自分の経験を通して学生さんに伝えていきたいと思っています。
佐々木 「スポーツ栄養学を学びたい」という学生が多いのですが、本先生のように公認スポーツ栄養士の資格を取るには養成講習会の受講や検定試験を受ける必要があるので、大変ですよね。でも今、皆さんのお話を伺っていて、管理栄養士の資格だけでもいろいろな分野で活躍できるし、多くの方の健康に貢献できると知り、勉強になりました。学生たちに伝えていきますね。
 スポーツ栄養学というと、オリンピック選手やJリーガーなどへの指導というイメージを持つ方が多いと思うのですが、実際はすごく幅広いんですよね。菅生さんのように一般のランナーの方を対象にした活動も増えています。皆さんのように、自分に近いところから健康な社会を築くお手伝いをする。そんなやり方もあると思います。
高橋 食を通じて皆さんを健康にできるようなお手伝いができればと思っています。
土田 私も人に助けられることが多い4年間だったので、今度は逆に助けたいなと感じています。
長江 食べることは生き抜く力ですから、皆さんのご活躍は子どもから高齢者まで多くの人たちの健康や豊かな暮らしに役立っていると感じました。本日は元気の出るよいお話をありがとうございました。


特別座談会 Vol.3

つながる歴史、人との絆

 

特別座談会 プロフィール 
石島 香織さん(写真左から4番目)人文学部 英米文化学科 1998年3月卒業
勝見 愛湖さん(写真左から1番目)児童学部 児童学科 2012年3月卒業
大熊 みゆきさん(写真左から3番目)児童学部 児童学科 児童文化コース4年
長江 曜子先生 香和会会長

共に学び、お互いに高め合った同期生との絆はもちろん、先輩や後輩との結びつき、さらには恩師である教 員との卒業後も続く交友は、学生時代に得られる最大の財産であり、一生の宝物です。そのように貴重な学 生同士のつながりを演出し、マネジメントしているのが学友会。新旧の学友会会長にお集まりいただき、聖徳 が誇る「つながる力」について語り合っていただきました。

 

学友会の思い出

司会:長江 聖徳大学ではハッピーホームカミングと題して、在学生が聖徳祭に卒業生をお迎えします。それを中心となって企画・運営しているのが、学友会役員の皆さんです。本日は、そういう意味 でも香和会との結びつきが深い学友会 の会長経験者と現役の会長にお集まりいただき、昔から今につながる学友会の活動や学生時代の思い出を語っていただ こうと思います。
石島 私は「何か打ち込めるものがないまま学生生活が終わったらつまらないな」と思って学友会に入りました。学友 会 室で 毎日のようにメンバーと会って、 意見を言い合っていたことが思い出されます。あとは、山中湖での合宿ですね。
勝見 合宿は懐かしいですね。入りたての頃は緊張していましたが、4 年生になって会長を引き継いでからは、後輩たちを迎え入れる側として合宿を楽しめました。ほぼ一日中、いろんなテーマでみんなと議論していたことを覚えています。行く前には一日中会議なんかできるわけが、マネジメントをするうえで当時の経験 がないと思っていましたが、雑談を交え が活きているとすごく感じます。リーダーながら話しているので、できるんですよシップを発揮して人をまとめる経験を学生 ね。時間を忘れるくらい楽しかったです。
大熊  コロナ禍もあり、私は合宿を経験したことがありません。代々受け継がれている引き継ぎの資料を見ると、日程などが書いてあるので合宿をしていたことは知っていたのですが、今のお話を聞いてすごくうらやましいです。後輩たちには以前のように、ぜひ合宿を復活させてほしいと思います。

長江 私も学友会役員だったのですが、学友会室って「たまり場」になっていましたね。そこに行けば必ず誰かがいて、マイカップも置いてある。私は空き時間によくそこで編入学試験のための受験勉強をしていました。大学の中に自分たちの交流の場があるってすごいことで、学友会のメリットだったなと思います。

石島 学友会の活動は学生がやることですから、大人から見ればたいしたことじゃなかったかもしれません。でも、私は今、勤務先の会社で管理職 をしているのですシップを発揮して人をまとめる経験を学生時代にできた ことは 、聖徳で得られた大きな成果だと思っています。チームとしてみんなが同じ目的に向かって仕事を進めるにはどうすればいいかとか、どうすればメンバーに自分の考えをわかりやすく伝えられるかとか、困りごとのあるメンバーへのフォローの仕方とか。学友会の会長を務めたことで視野が広がったと思います。
勝見 私はマネジメントが 苦手なほうでした(笑)。どちらかというとアイデアを出して、みんなを巻き込んでいくタイプでしたね。いろいろなアイデアを出して、それをみんなの力で実現させたのはよい経験でした。聖徳祭であればフリーペーパーに広告を載せたり、駅にポスターを貼ってもらったり。景品をつけてポスターのビジュアルを学生から公募するということも始めました。
大熊 今でも景品はつけています。そのおかげか、素敵なポスターがたくさん集まります。
 

つながる歴史、人との絆

大熊 一昨年はコロナ禍の影響で聖徳 祭の開催すら危ぶまれていました。学友 会自体もほとんど活動ができていませんでしたが、昨年からはオンラインを活用して役員同士が日常的につながれないかと、いろいろと模索しながら活動をしています。オンラインでの打ち合わせであっても、対面で行うのと同じくらいスムー ズに話し合いが進められていると思います。以前のように完全に対面に戻るにはまだ 時間がかかってしまうと思うので 、 私たちの代でオンラインによる学友会活 動の土台をできるだけつくっていこうという意識もありました。聖徳祭も私が実行 委員長を務めさせていただいた昨年は、 一部の団体の発表の様子をYouTubeで 生中継しました。
長江 一昨年は残念ながらハッピーホームカミングができませんでしたが 、昨年は学友会の方々に一生懸命取り組んでいただいたおかげで、全国の卒業生に向けてオンラインライブ 配信でお伝 えすることができました。どんな困難な状況であっても、その中でできることを考え、 工夫する。あきらめないのがすごいと思 います。
大熊 オンラインでハッピーホームカミングを開催して、そこで初めて先輩方が社 会でどのような活躍をされていて、どんな思いで大学のことを懐かしんでいらっしゃるのかを知ることができました。聖 徳に入って学び、卒業してよかったという思いを語られる姿を見て、自分も卒業した後にこんなふうに思えたらいいなと 感じましたね。
勝見 私は附属の高校から大学に入学 し、卒業後の就職を経てもう一度、聖 徳の大学院で学び直すこともできました。 卒業してからも、一番親しくお付き合い をしているのは学友会の友人たちです。 大学院修了後に就職した保育園を紹介し てくださったのも聖徳の先生ですし、その先生とはいまだに年賀状やメールのや りとりが 続いています。そう考えると、聖徳に入って本当によかったし、ここで築いた人間関係が今でも続いているのは、とても貴重なことだと思っています。
石島 今日の座談会に参加しないかと 電話をかけてきてくださったのも、聖徳 大学で働いている同期の方でした。電 話で話している時、一瞬にして学生時代 がよみがえる感じがしました。 長江 聖徳は学生同士の交流が密です し、クラス担任制によって教員と学生の距 離も近いですよね。学友会については、脈々と引き継がれるマニュアルがありますよね。 当時、書記として、記録を作っていました。
勝見 私たちの代から紙だけでなく、デ ータでも引き継ぐように変えていきました。
長江 在学生の皆さんにはマニュアルだ けではなく、聖徳の「つながる力」もバトンやたすきのようにつないでいってほし いですね。卒業生には親子2代で聖徳で学んでいる方も数多くいらっしゃいま すし、勝見さんのように大学院で学び直しをされる方もいらっしゃいます。香和会特待制度も役に立ちますね。卒業後も聖徳とのつながりを活かして、「和の 精神」でより豊かな人生を送っていただ ければと思います。
今日はよいお話をたくさん聞けてよかったです。皆さん、ありがとうございました。


特別座談会 Vol.2

支え合う学びが育む豊かな人間力

 

特別座談会 プロフィール 
川並 弘純先生 香和会名誉会長(理事長・学園長・学長)
土井 優奈さん(写真左から3番目) 総合文化学科 図書館司書・ITコース 2021年3月卒業
土井 富美子さん(写真左から2番目) 総合文化学科 図書館司書・ITコース 2021年月3卒業
蓑輪 裕子先生 総合文化学科長
長江 曜子先生 香和会会長

川並弘純名誉会長(理事長・学園長・学長)がお迎えして、お話をうかがったのは、今年3月に総合文化学科を卒業された土井優奈さんと、その母親である富美子さん。小児がんの後遺症から学生生活に不安があった優奈さんの「学びたい!」という願いをかなえるため、富美子さんも一緒に入学し、親子で学ばれました。同級生とのふれあいなど楽しい思い出を振り返りながら、特別座談会は大いに盛り上がりました。


親子で進学 

 
長江会長 優奈さんは小児がんの一つである小児脳腫瘍の体験者で、今も後遺症があるとうかがっています。そうした状況の中で、お母さまの富美子さんと共に総合文化学科に入学し、2年間で卒業されたのは大変に素晴らしいことだと思います。親子での進学を決意されたきっかけを教えてください。
優奈さん 私は中学3年生の時に脳腫瘍を発症し、手術や放射線治療、薬の投与などを受けました。後遺症のため大学進学は諦めていたのですが、中学の時の同級生に再会し、彼女が大学に行くと聞き、「やっぱり自分も行きたかったな」と思って。
富美子さん それを聞いて、辛い治療を頑張りつづけた娘に同年代の友だちとの楽しい思い出をつくってあげたいと思い、通える大学を探しました。病気になる前は栄養系に興味を持っていたので、総合文化学科にフードマネジメントコースがある聖徳大学短期大学部のオープンキャンパスに参加しました。そこで教えていただいたのは、調理系だと実習があるので難しいけれども、図書館司書・ITコースなら自宅で学修できる部分も多く、授業に出られないことがあっても対応できるし、体力的に自信がついたら、興味があるフードマネジメントコースの授業を履修することもできるということでした。また、何度もオープンキャンパスに通ううちに、先生方のご対応や学生の皆さんの様子に好感を持つようになり、聖徳大学短期大学部に決めました。
 でも、体調が不安定な娘を一人で通わせることに不安もあったので、「私も一緒に入学しよう。もともと4年制大学に通わせようと思っていたのが短期大学になるなら、ふたりで通っても学費的にはあまり変わらない」と考え、自分も一緒に進学することを決意したのです。それと、短期大学には「長期履修学生制度」があると教えていただいたのも安心材料になりましたね。
川並学長 長期履修学生制度はあまり積極的にアピールしてこなかったこともあり、土井さん親子が最初の入学許可者です。おふたりは結果的に2年で卒業しましたが、今の時代、ゆっくりと自分のペースで学びたいという人や、働きながら、あるいはボランティア活動をしながら大学で学びたいという人も増えているので、これからはもう少しアピールしていこうと考えています。
 

学生生活の思い出

優奈さん 私には失語症もあり、考えたことがすぐにパッと言葉にならないのです。それで授業中も、考えを一度ノートに書いてから発表していたのですが、どの先生もゆっくりと待っていただき、ありがたかったです。
 学生生活は本当に楽しかったですね。お友だちができて、一緒にいろいろな体験をしました。学外研修や聖徳祭、授業後に遊んだことなど、すべてが大切な思い出です。なかでも楽しかったのが体育の授業。私は見学の許可が出ていたのですが、見ているうちにみんなと一緒にやりたくなって、参加することもありました。バスケットボールでシュートできたのは、嬉しかった!
富美子さん ゆっくりしたドリブルだからすぐにボールを奪えるはずなのですが、みんなが「優奈ちゃんがあんまり楽しそうで、奪えない」と言って、シュートまで打たせてくれたのですね。見ていて微笑ましかったです。
 入学前は親子で孤立するのではと思っていました。それが、たとえばプログラミングの授業。娘は具合が悪くなって途中退室することもあったのですが、そうすると、私が一人で自分と娘、ふたり分の作業をしなければならなくなります。それでバタバタしていると、だんだんと何人かのクラスメイトが作業を手伝ってくれるようになって。教室移動の時には荷物を持ってくれることもあり、すごく感動しました。本当に優しい子が多いですね。
蓑輪先生 学生たちも前向きなおふたりからとてもよい刺激を受け、自然とお互いに支え合っていました。
 

学ぶ機会の大切さ

 

優奈さんが卒業制作でつくったブーケ

優奈さんが卒業制作でつくったブーケ


優奈さん 私は脳が疲労しやすいので、テストは苦労しました。落とした単位もありましたが、徹底的に復習して頑張り、次年度は単位を修得しました。
蓑輪先生 優奈さんは卒業制作で素敵なお花のブーケをつくり、結婚式についてのレポートも発表しました。
富美子さん 立派なホールでみんなの前で発表している姿を見て、感極まりました。
蓑輪先生 富美子さんも、優奈さんの過酷な闘病生活を『 513日の闘病記録』という 300ページにわたる卒業論文にまとめられましたね。
富美子さん 1冊の冊子にして、娘にプレゼントしたかったのです。将来、何か壁にぶつかった時、「これだけ頑張って治療をしたのだから自信を持って」と見せてあげたい。
川並学長 優奈さんは高校時代と総合文化学科で学んだ 2年間を経た現在とで、将来の目標に変化はありましたか?
富美子さんの卒業論文『513日の闘病記録』

富美子さんの卒業論文『513日の闘病記録』

優奈さん 高校時代は生きるのに精一杯で、夢はなかったですね。現在はリハビリ病院に通っていますが、体力と体調が安定したら、就労移行支援を受けて就職したいと思っています。
川並学長 富美子さんも社会人になられてから学んだことで変化がありましたか?
富美子さん 18歳の時に学びたかったことと、現在の状況の中で学びたいことは違っていて、また、学びたいという気持ちがより高まったことで吸収の仕方も違ったと思います。卒業した今は福祉分野の勉強がしたくて、聖徳の通信教育部の資料を取り寄せたりもしています。社会人になってもう一度大学に入るのは一歩踏み出す勇気がいりますが、入ってみれば楽しいですし、社会人受験がもっと広がるといいと思います。
川並学長 学ぶ機会は、やっぱり大事ですよね。私は本来その人が持っている力を多面的に見る必要があると思っています。優奈さんが入学してくださったことで、今回はいろんな意味で、私たちもチャレンジをさせてもらえました。また、どこの大学や短期大学でも、社会人の学び直しが課題になっているなか、富美子さんから改めて学び直しの可能性について聞かせていただけたことも勉強になりました。
長江会長 本日は素敵なお話をありがとうございました。


特別座談会 Vol.1

つながる ひろがる 和の精神(こころ)~卒業生を迎えて 


特別座談会 プロフィール 
川並 弘純先生 香和会名誉会長(理事長・学園長・学長)
山口志津子さん(写真左から2番目)聖徳学園 短期大学幼稚園教員養成所 昭和43年卒、学校法人いわはま学園 北部幼稚園 園長
山口恵理子さん(写真右) 聖徳大学 人文学部 児童学科 平成9年卒、学校法人いわはま学園 北部幼稚園 副園長
長江 曜子先生 香和会会長

素晴らしい先生に恵まれた聖徳での学校生活 

 
長江会長お母様の志津子さんは現在の聖徳大学幼児教育専門学校、恵理子さんは附属高校から大学、大学院に進学と、親子2代で聖徳の卒業生でいらっしゃるんですね。
志津子さんはい、私の頃は1学年に400名くらいいて、みんなでワイワイ言いながら、とにかく楽しく学んでいました。寝台列車に乗って北海道へ学外研修に行ったことなど、よい思い出がいっぱいです。
恵理子さん私も大学に入学してすぐに志賀高原へ合宿に行ったことはよく憶えています。川並香順記念講堂でのシリーズコンサートも好きでした。でも、聖徳でいちばん印象に残っているのは、先生方の素晴らしさですね。母と私の親子2代でお世話になった先生もいらっしゃいます。とくに大学時代に卒論を担当してくださった白鳥元雄先生には大変お世話になりました。私は大学卒業後に1年間、先生の下で研究助手のようなことをさせていただきながら勉強を重ね、一期生として聖徳大学大学院に進学しました。院でも国谷誠朗先生など、多くの先生方から素晴らしい学びを得ることができたことを、今でも感謝しています。
 

どんな時代であっても
大切にしていきたい人間教育

 
長江会長高校から大学院まで聖徳で過ごしたことで、どんな影響を受けたとお思いになりますか?
恵理子さん挨拶をするとか時間を守るといった、日常生活における一つひとつの礼儀作法です。自分では普通のことだと思っていましたが、社会に出てみると、意外にそうでもないということがわかる、というのはよくありました。私どもの幼稚園では先生方の半分近くが聖徳出身者なのですが、その方たちにも聖徳のカラーが出ていると感じます。素直でかわいらしい。退勤する際に、「ありがとうございました」「お先に失礼します」と、必ず言ってくれます。
志津子さん聖徳以外から来た先生方もそれを真似してくれるので、幼稚園全体の雰囲気がよくなりますね。
川並学長相手を思いやる気持ちを育み、人間力を高める教育を、学園は時代を超えてずっと守ってきたし、今後も守っていきたいと思います。今年は残念ながら、新型コロナウイルス感染症の影響で、新入生に向けた人間教育カリキュラムが今のところ十分にできていない状況です。しかしながら、現在のコロナ禍において、始まる前は教員も学生も多少の不安を感じていたオンライン授業は、始まってみたらとても順調に行われています。
恵理子さんオンライン授業だと通学時間もなくなるので、効率的ですね。ただ私は、先生の研究室に入り浸るようなかたちで、いろいろなお話をさせていただいたことがすごく勉強になったと思っているので、それができないのは寂しいですね。
川並学長コロナ禍によって失われたもの、とりわけそのような対面での人間教育の部分をどう補っていくかは、今後の課題だと思っています。
 

より社会に開かれた
高等教育機関へ

 
川並学長恵理子さんが在籍していた当時から変わったことと言えば、「SEITOKU Academic Literacy」という科目を取り入れていることですね。一時期、退学する学生が増えたので原因を調べると、文章をまとめるのが苦手で、実習ノートを書けなくて学業を諦める学生もいるとわかりました。それで、自分の思っていることを表現することと、論理的に考えることを体系的に学ぶ科目をすべての学部の1年次に履修させるようにしました。これには退学者を減らすだけではなく、就職するという意識を持つ学生を増やすという副次的な効果もありました。私が学長に就任した当時は約65%だった実就職率が、今では96.1%にまで上がりました。自立した女性を育てるという意味でもよい成果につながっていると思います。
恵理子さん同級生の多くが「花嫁修業」のような意識で学んでいた私の学生時代と大きく違いますね(笑)。
川並学長それと、これからの時代は雇用も流動化してくるので、リカレント教育にも力を入れていきたいですね。高校を卒業した18歳の学生だけを対象にするのではなく、社会人の学び直しも積極的に応援する、より社会に開かれた高等教育機関にしていきたいと思っています。
長江会長香和会でも、それを積極的に後押ししたいという思いがあります。親子2代、3代にわたって聖徳で学ぶ学生や、学び直しにチャレンジする卒業生を「香和会特待制度」で支援しています。3年間で23名が奨学金を受けました。本日はどうもありがとうございました。